横丁・長屋のこれまで
弁天横丁の歴史
蔵造りの町並みのすぐ北、元町一丁目(旧町名=本町)の通りの1本北側にある通称弁天横丁は、細い路地を挟んで古い長屋が軒を連ねる川越の中でも独特な雰囲気のある横丁です。
明治26年(1893年)の川越大火以後に形成された路地で、長屋には芸者さんが住み、置屋という芸者さんを料亭などに差し向けるお店がありました。往時は芸者横丁と言われていました。そのうち芸者さんたちがそれぞれ飲食を始めて、長屋の1階が飲み屋になっているところが何軒もありました。
その後、飲み屋もおかみさんが亡くなったりして、昔からのお店が全て無くなってしまい、今では空き家が目立つようになりました。
川越蔵の会は、6年前に麻利弁天長屋という七軒長屋の一角、かつて「若太郎」という小料理屋だったところを借りて、ギャラリーとしてリフォームを行いました。ここを染織の作家さんにサブリースして2014年春に「ギャラリーなんとうり」がオープンしました。
それ以降、同じ長屋に設計事務所や「CAFE&ギャラリー二軒堂」が入居し、また喜多町弁天長屋にも「坂庭」という革製品の修理のお店が入居し、路地の様子が少しずつ変わりつつあります。
喜多町弁天長屋の保存・再生・活用
現在、川越蔵の会が改修事業に取り組んでいる場所は、喜多町弁天長屋の「悦」という小料理屋が入っていた区画です。この建物は四軒長屋ですが、当初は、「埼玉縣重要物産陳列所(明治35年、埼玉縣營業便覧)」として建てられた可能性が高い建築です。
近頃、この中の一軒に「坂庭」という革製品の修理のお店が入りました。しかし、3軒が空き家の状態です。「悦」は長屋の2軒分に加えて増築しているため面積が180㎡以上と規模が大きく、なかなか借り手がつかないできました。このため、当会では大家さんからこの部分を借り受け、活用を図ることになりました。現在の計画では飲食店、SHOP、シェアオフィスなど複数の入居者でシェアする形で有効利用を図りたいと考えています。
今後、外部や共用スペースを改修した上で、入居者を募りサブリースする計画です。大家さんから借りる賃料とサブリースする賃料の差額で外部廻りや共用部の工事に必要な初期投資を10年間かけて回収するという事業計画を考えています。
入居者は、アート、ものづくりに携わるクリエイティブな若い世代を積極的に誘致し、特徴ある界隈を路地全体で作っていきたいと思います。また同時に、横丁の人々のつながりを大切にした和気あいあいとしたコミュニティを再生させたいと考えています。